先日Twitterで友人の谷口さんがこのように書いているのを発見。
谷口さんと言えば、松山では知らない人はいないオシャレ鍼灸院を作った人物。そんな人が「ザ・鍼灸院」の店舗に移転することに衝撃を受けました。
どんな想いを持って移転するのか、現在のオシャレ鍼灸院はどのようにして誕生したのか解き明かすためインタビューをおねがいしました。
今回はその様子をダイジェスト版でお伝えします。
出演者
谷口一也
2010年、愛媛県松山市に「鍼灸院めぐる」を開院しスタッフ1名を抱える院長。500万をかけカフェと見間違えるオシャレなデザインの院を開設。2020年9月に近くのテナントへ移転予定。
北川直樹
2016年、愛知県名古屋市に「ふくぎ鍼灸院」を開院。開院にあたりデザイナーへ依頼し、内外装だけで総額1000万かけたこだわりの院を作る。2020年からは鍼灸師に対するコンサルティングを中心に事業を行っている。
オシャレにしたら集客できると思ったのに
(移転前の鍼灸院めぐる)
北川直樹
よろしくお願いします。私は一度めぐるに行ったことがあるけど、すごいオシャレでしたよね。まずはオシャレな院を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
“谷口一也”
元々、美容鍼灸と接骨院を合わせた院として出発しました。(現在は治療だけでの鍼灸専門院)オシャレにしたかったのは若い女性(30代くらい)に鍼灸を受けてほしいという想いからです。
北川直樹
なるほど。このオシャレというのは、集客的な目的もあったということでしょうか?
“谷口一也”
治療の実力だけでは自信がなかったので、オシャレの力を借りて実力不足を補いたいという考えがあったんだと思います。
北川直樹
実際かなりオシャレでイメージ通りの院ができたわけですよね?
“谷口一也”
ほんとに最悪でした。整骨院と美容鍼灸で、お年寄りと若い人全員を集客しようという浅はかな考えだったので、誰一人来ないという・・・(笑)美容鍼灸が少しずつ来てギリギリ食べていけるくらいの感じでした。
“谷口一也”
厳しかったですね。接骨院で働いたことがなかったので。
“谷口一也”
そうです。接骨院は流れ作業で時間かけずにやらないと利益出ないはずなんですけど、予約制にして一人30分とかかけて数百円とかで利益になりませんでした。
“谷口一也”
活法(かっぽう)と出会って、美容より治療が楽しくなってきて、どんどん治療中心になっていきました。最終的には保険もやめ、接骨院の看板を外しました。それでも朝から夜まで一人で働いてギリギリ食べていけるくらいの感じでした。
広すぎた院内
(谷口さんとスタッフの西村さん)
北川直樹
その後スタッフさんを雇われたんですよね。3年くらい前ですか?
北川直樹
今は二人で働かれてますけど、元々一人で働かれてましたよね?その時からベッドが4台あったと聞いてますが、開業時から「広いな」という感じはあったんですか?
“谷口一也”
ありました。開業前に鍼灸接骨院を開業していた先輩に相談したとき「20坪くらいの広さは必要」と言われ「一人で4〜5人をぐるぐるまわせばいいんだな」と思い今の形にしました。
北川直樹
確かに、よくある鍼灸接骨院でやっていこうと思うとそれくらいの広さが必要なイメージはあります。でも、それは谷口さんに、はまらなかった?
北川直樹
その後二人になりましたけど、それでもまだ谷口さんとしては広いと感じてましたか?
“谷口一也”
二人になれば、ベッド3台くらいは使うかなと思ってましたが、結局2台しか使ってません(笑)
移転を決断したのはコロナウイルスによる経営悪化
北川直樹
今回、このタイミングで移転を決断したきっかけは、なんだったんですか?
“谷口一也”
完全にコロナですね。緊急事態宣言が出た3月に患者さんが減り始めて、これは大変だなと。これが年内このままだとまずいと思って。家賃の支払いがまずくなったらつぶれるなと思いました。4月の時点で出たいと思いました。
“谷口一也”
大家に退去を伝えたんですけど、契約上では退去通告後6ヶ月は契約を続けなければいけないんですよ。
“谷口一也”
なので大家さんに「そこをなんとか。なんとかなんないなんないですか?うち、もうだめなんです」って言って(笑)
“谷口一也”
交渉したら4ヶ月にしてもらって。そこから新しい店舗を探し始めました。
移転で家賃は半分以下に
(移転前の鍼灸院めぐる)
北川直樹
じゃあちょうど4ヶ月ですね。新しい院の家賃は現在の半分くらいですか?
北川直樹
あー、半分以下。確か今の店舗は、建物が新築の時にテナントとして入ったんですよね。その後家賃交渉はしたことあるんですか?
北川直樹
じゃあ新築のままの家賃でここまで来たんですね。次の店舗は築何年くらいですか?
北川直樹
じゃあ今の店舗と同じ頃に建てられたんですね。それで半分以下の家賃は大きいですね。
移転後も今のめぐるの雰囲気を残したい
北川直樹
今回、新しい店舗の図面を見せて頂いたんですけど、店舗デザインで気をつけたことはありますか?
(新しいめぐるの図面)
“谷口一也”
今の店舗を設計してくれた人に引き続きお願いしたんですけど、今のイメージを崩さないように考えました。丸みのある受付とか。
北川直樹
あー、やっぱりそうですよね。見た時に「めぐるだな」って思いました。
“谷口一也”
壁紙の色も今と変わらないよう、緑っぽい感じにしようと思ってます。
(丸みのある受付と緑の壁紙)
移転後も残すもの、残さないもの
北川直樹
Twitterで「ザ・鍼灸院」にすると書いてました。今のめぐるにあって、新しいめぐるにないものもいっぱいあると思います。谷口さんにとってやっぱり残したほうがいいなと思ったもの、いらなかったなと思うものってありますか?
北川直樹
例えば、鍼灸院にとって壁の仕切りはあったほうがいいと思いますか?
“谷口一也”
そうですね。と言うか、あのカーテンが嫌だったから壁にしました。今回もそこだけは言って。
(移転前のキッズスペース)
“谷口一也”
なくてもよかったかな。あれば写真でお子様連れのお母様は来やすいと思うんですが、実際使ったかというとほぼ使ってない。4〜5歳くらいの子しか使えないので。
北川直樹
確かに対象年齢が狭いかもしれませんね。待ち合いも広く取ってありますが、ここはどうですか?
(移転前の待ち合いスペース)
“谷口一也”
広さはそんなにいらないし、予約制でやってるから椅子2つあればいいなって。
北川直樹
そういうのもあって、今回は簡素にしているんですか?
1年目で打ちのめされました
(移転前のトイレスペース)
北川直樹
これまでの話をまとめると、デザインがいいから、オシャレだから患者さんが来るわけではない?
“谷口一也”
ダメ。ほんとに1年目で打ちのめされましたね。これは絶対(患者さんが)めちゃくちゃ来るぞと思ってましたからね。完成したとき。
“谷口一也”
そう言ってくれる方はいますけど、だから(患者さんが)来たかというと、わかんないですね。
“谷口一也”
まぁならないですよね、普通に考えたら(笑)鍼灸院ですから。
北川直樹
そういうことですよね。僕もまさにそうことを思っていたので。
中が見えないのは失敗したなと思った
北川直樹
外観はどうですか?きちんとデザインして作られたと思うんですけど。外観がいいと飛び込みが来やすいとか。
(移転前の外観)
“谷口一也”
逆に(今のめぐるは)クローズドな印象じゃないのかなと思ってます。
“谷口一也”
結構不安要素というか、作ってから他の外観を見るようになったんですけど、ガラス張りで中が見れる方が繁盛している感じがして。中が見えないのは失敗したなと思って。かなり早い段階でやるんじゃなかったなと。
北川直樹
これは中が見えないことを狙って作ったデザインなんですか?
“谷口一也”
そうです。そう。はじめはそうだったんです。その方がいいと思ったんですよ。
北川直樹
地域の人に来てもらおうと思うと、もうちょっとオープンな方がいいかなってことですかね。
北川直樹
今回お話を聞いてて、僕がふくぎ鍼灸院を作って思ったことと同じなんで、やっぱりそういうものなんですね。
最初は最低限でシンプルな院にするのがオススメ
北川直樹
これから開業しようとする人にアドバイスするとしたら、壁は立てたほうがいいけど、それ以外はできるだけシンプルに、という感じでしょうか?
“谷口一也”
そうですね。時間が経てば変えたくなると思うので、最低限でシンプルに。そして、(店舗デザインに)過度な期待はしない、と。
北川直樹
デザインをいい鍼灸院にしても患者さんは来ないぞ、と。
北川直樹
じゃあそれは期待しちゃダメですね(笑)集客は、他のものでなんとかしなければいけないと。
“谷口一也”
技術に自信がない人か、よほど自信がある人がデザインを気にする気がしますけど。
北川直樹
確かに、そうかもしれませんね。何もなければ「普通の」鍼灸院でいっちゃいますもんね。
オシャレより清潔
北川直樹
汚いのは行かない理由になりますけど、オシャレな鍼灸院は行く理由にならないですもんね。
北川直樹
なので最低限のレベルが保てていれば、患者さんは気にしていないのかなと、内装については。
このあとの話
ここまでが、動画の40分までの内容です。
このあとに、店舗にかかる予算感の話をして、内外装費の見積書も見せてもらいました。これから開業される方の参考に見積書貼っておきます。(了解済み)
他にも現在の店舗に居抜きで鍼灸接骨院が入る、不動産屋と敷金をめぐる謎のやりとりについても話しを聞きました。
興味がある方は動画でぜひ御覧ください。
最後に一言いわせて
今回の動画では「鍼灸院にオシャレはいらないよ」という結論になってますが、正しく言うと「戦略のないオシャレな鍼灸院は無意味」だと思っています。
例えば、東京の銀座や表参道で開業する、美容鍼灸の専門院でやっていく、こういう場合であればオシャレさも活きてくると思います。
ただ、地方都市で普通の鍼灸院を開業する際に、集客目的でお金をかけてオシャレな鍼灸院にするのは費用対効果が非常に低いということですね。
経営は失敗する可能性もあるので、最初は撤退戦も見据えることが大切だと思います。
鍼灸院やっててお困りごとありましたらご連絡ください。
力になれるようがんばります!
追記
2020年8月、鍼灸院めぐるは予定通り移転されました。
移転後の写真も、少しですが掲載しておきます。